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おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页
ナニその、胡麻和のような汝が面を甜めろい! さあ、どこに私が汝の紙入を掏ったんだ。
こっちあまた、串戯じゃねえ。込合ってる中だから、汝の足でも踏んだんだろう、と思ってよ。足ぐれえ踏んだにしちゃ、怒りようが御大層だが、面を見や、踵と大した違えは無えから、ははは、」
と夜の大路へ笑が響いて、
「汝の方じゃ、面を踏まれた分にして、怒りやがるんだ、と断念めてよ。難有く思え、日傭取のお職人様が月給取に謝罪ったんだ。
いつ出来た規則だか知らねえが、股ッたア出すなッてえ、肥満った乳母どんが焦ッたがりゃしめえし、厭味ッたらしい言分だが、そいつも承知で乗ってるからにゃ、他様の足を踏みゃ、引摺下される御法だ、と往生してよ。」
と、車掌にひょこと頭を下げて、
「へいこら、と下りてやりゃ、何だ、掏摸だ。掏摸たア何でえ。」
また礼之進に突懸る。
三十四
「掏られた、盗られたッて、幾干ばかり台所の小遣をごまかして来やあがったか知らねえけれど、汝がその面で、どうせなけなしの小遣だろう、落しっこはねえ。
へん、鈍漢。どの道、掏られたにゃ違えはねえが、汝がその間抜けな風で、内からここまで蟇口が有るもんかい、疾くの昔にちょろまかされていやあがったんだ。