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よめとりにだいき

嫁取り二代記

山本 周五郎

「婦人倶楽部」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,763 字 · 23 页

青空文庫

直次郎が発足して二三日たった、――ある日のこと、勘兵衛が盆栽いじりをしていると、離室の方からお笛が静かにやってきて、

「失礼ながらお手伝い仕ります」

と云った。見ると甲斐甲斐しく袖をからげ、水桶を携えている、――何をするかと思って黙っていると、盆栽の鉢を一つ一つ丁寧に洗いはじめた。

「そんな事をやったことがあるのか」

「いいえ――」

慎しく頭を振りながら微笑する、とても芸妓などしていた者とは思えぬあどけなさだ。勘兵衛はむっつりとしたまま、

「したくもない事を、機嫌執りのつもりでするなら止めにせい、わしはおべんちゃらが大嫌いだぞ」

「あのう、ここに真柏の植わっております鉢は、白磁とか申す品でござりますか」

勘兵衛の高調子には構わず、お笛は静かに振仰いで訊いた。――勘兵衛は依然むっつりと外向きながら、

「白磁とか青磁とか、そう大雑把に云われては敵わん、それは白磁の内でも『饒州の白』と云って唐来の珍物じゃ」

「饒州の白……有難う存じました」

「こっちのを見い、これは古備前物で了心の作と伝えられるが、比べて見ると違いが分るであろう、――どうじゃ」

「拝見仕りまする」

お笛は勘兵衛の手から楓の鉢を受取って、しげしげと眺めていたが、