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よめとりむことり

嫁取婿取

佐々木 邦

「婦人倶楽部」1929(昭和4)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,654 字 · 175 页

青空文庫

山下さんも二郎君が目下の大屈託だ。三男の雅男君は中学の四年生だから、来年は高等学校を受ける。この方は今までのところ申分ない。

「お前も法科をやるかい?」

「はあ。しかし官吏になります」

とハキ/\していて、お父さんの期待以上のことを言う。二人一緒に入学試験を受けて、弟が合格、兄貴が落第というようなことになっては困る。しかしその懸念の為め弟の方を一年待たせるのも馬鹿げている。それやこれやで思い悩んでいるのだが、二郎君は一向平気だ。

「二郎、一寸お入り」

と山下さんは或晩書斎から呼んだ。縁側を通る姿が見えたので、丁度考えていた折から一つ訓戒を加える気になったのである。

「はあ」

と二郎君は命に従った。

「何うだね? この頃は勉強しているかい?」

「したりしなかったりです」

「もう間もなく此年も暮れるが、決心がついたかい?」

「はあ」

「本気になってやるかな?」

「早稲田をやります」

「私立はいけないよ」

「しかし僕は田舎の高等学校へ行きたくないんです。東京にいないと人生が分りません」

「豪いことを言うね」

と山下さんは自分の口癖に思い当って、覚えず相好を崩した。

「僕は物理や化学はもう厭です。