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よめとりむことり

嫁取婿取

佐々木 邦

「婦人倶楽部」1929(昭和4)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,654 字 · 175 页

青空文庫

「構わないよ。内々に遠慮は要らない」

「私達の取越苦労かも知れませんけれど……」

と春子さんは申訳をして、再び要領を繰り返した。お父さんは、

「ふうん、ふうん」

と一々頷きながら聴き終った後、

「成程。ふうん」

と言って、腕を拱いた。そのまゝ少時無言だったので、お母さんは、

「あなた」

と促した。

「ふうん」

「ふうん/\って、何うなさいましたのよ?」

「思い当ることがあるんだ」

「まあ!」

「この間の晩、俊一がヒソ/\声で電話をかけていたんだ。俺は便所の帰りに通り合せて『それじゃ絹子さん』と言うのを聞いた。ふうん」

とお父さんは又溜息をついた。

「何うしたものでございましょうね?」

とお母さんは泣声を出した。

「…………」

「あなた、帰って来たら、厳しく訊いて下さいよ」

「いや」

「はあ?」

「これはうっかり訊くと藪蛇になるよ」

「何故でございましょう?」

「訊いて見て、何でもない交際ならば大仕合せだが、俊一だって子供じゃないから、気持を悪くするよ」

「それは仕方ありませんわ。一緒に歩いたり電話をかけたりしているんですもの」

「いや、親として子を疑ってかゝるようじゃ失敗だ」

「でも何んなことになっているかも知れないじゃありませんか?」