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よめとりむことり

嫁取婿取

佐々木 邦

「婦人倶楽部」1929(昭和4)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,654 字 · 175 页

青空文庫

「ふうむ」

「山下の母ですと申しましたら、ハッとしたように切ってしまいましたの」

「ふうむ」

「あの方じゃございませんでしょうか?」

「今日のがかい?」

「はあ」

「さあ」

「慌て方が唯じゃございませんでしたわ」

「それなら問題が簡単だけれど、三郎はダンサーだろうって言うんだ」

「でもあなたは令嬢だろうと仰有ったでしょう?」

「それがさ。断髪だからね」

「断髪の令嬢だって幾らもありますよ、この頃は」

「平塚さんのところは軍人だろう?」

「はあ。もう予備だそうですが、陸軍の少将とか中将とか申しました」

「軍人の娘にあんな服装をさせる筈はない。違うよ、矢っ張り」

「別口でございましょうか?」

「そんなに変だったのかい?」

「はあ、確かに俊一と思って出たらしいのよ」

「俊一がそんなに彼方此方へ手を伸ばしている筈もないね。矢っ張りその令嬢かな、この間の晩電話をかけていたところを見ると」

「それで私も思い当りましたのよ」

「あゝ、何が何だか分らなくなった」

と山下さんは思案に余した。明治も三十年ソコ/\の法学士だ。現代娘の判別は元来むずかしい。

それから間もなくのことだった。

「あなた」

と夫人が聞き耳を立てた。