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よめとりむことり

嫁取婿取

佐々木 邦

「婦人倶楽部」1929(昭和4)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,654 字 · 175 页

青空文庫

角張り婿

と俊一君が言い間違えた時、

「オホヽヽヽ」

と二人は一度に笑い出して、

「兄さん、鼠のように猫じゃなくて?」

と冷かした。

「それ見ろ。お前だ」

と俊一君は芳子さんの手を捉えた。

「兄さん、御免なさい」

「お前達こそ早くお嫁に行きたいものだから、おれに早く貰わせたがるんだろう?」

「まあ! 厭な兄さん!」

「厭な兄さん!」

と二人は逞ましい表情をした。

「ところでボーナスをやるぞ」

「恐れ入ります」

「オホヽ、お幾ら?」

「いつもの通りだ。もっとやろうと思ったが、悪口を言ったから止めた」

と俊一君は机の中に用意して置いた祝儀袋を二人に渡して、

「三越へ持って行って、湯水のように使って来い」

と言った。

「有難うございました」

と二人がお礼を述べたのを切っかけに、

「兄さん、兄さん」

と年下の連中が入って来た。

角張り婿

「お母さん、世界の労働階級で未だ曾つてストライキをしたことのないものが唯一つありますが、御存知ですか?」

と長男の俊一君が訊いた。

「そんなむずかしいことが私に分るものですか」

とお母さんは相手にならない。見ていた新聞を置いて立ちかけた。それに市電従業員怠業のことが出ていたので、ストライキの話になったのだった。