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よめとりむことり
嫁取婿取
佐々木 邦
「婦人倶楽部」1929(昭和4)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,654 字 · 175 页
一生に一遍しか買わない」
「鉄瓶屋の方から言えば、一世帯に二つ売れていますわ。売れないってことはございませんよ」
「絶対に売れないとは言っていない。売れが遠いと言うんだ」
と、鉄瓶が売れるか売れないかの争議である。
「分りましたよ。あなたのお心持が悉皆分りました」
「然うさ」
「私、未だ何とも申上げていませんわ」
「同じ商人でも魚屋なんかは品物が直ぐに消えてしまって後が利くから繁昌する。鉄瓶は一遍買えば子々孫々の代まである。その辺の道理が分れば宜いのさ」
「いゝえ、然うじゃございませんわ。帝大でないからお気に召さないんですわ」
「そんなことはないよ。帝大も商大も大学に変りはない」
「いゝえ、それを俊一と私とで無理に申上げたものですから、今度は商売にケチをおつけになるんですわ」
「然う曲解しちゃ困る。世の中には繁昌する性質の商売と身代限りをする性質の商売がある。安子の一生に関係することだから、そこを能く考えて見ろと言うんだ」
「鉄瓶屋だから身代限りするって理窟はございませんよ」
「今も話して聴かせた通り、品物の性質上、魚屋ほどは繁昌しないに定っている」
「それじゃあなたは魚屋から貰いに来れば、安子をお上げになりますか?」