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よめとりむことり
嫁取婿取
佐々木 邦
「婦人倶楽部」1929(昭和4)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,654 字 · 175 页
「能く知っているのね」
「あら!」
と安子さんは突如立ち上った。
「何?」
「芳子よ。そこから覗いていましたわ」
「厭な子ね」
「この間から煩いってありませんのよ」
「もう宜いわよ」
「油断がなりませんわ」
「それ預けて置きますから、能く考えて見てお母さんに申上げたら宜いでしょう」
「えゝ」
「安子や、俸給取よりも商家よ」
「私、お金なんか何うでも宜いわ」
「何も分らないのね」
「それは無論あるに越したことはありませんけれど」
「関口さんといえば本郷では大抵の人が知っている財産家だそうですよ。あの墓地でも分っていますわ。家のよりも余っ程大きいでしょう? 眼鏡屋ばかりでなくて、地所を持っているんですって」
と春子さんは仲人口をきゝ始めた。
隙見を見つかった芳子さんは二郎君のところへ逃げて行って、
「来てよ。あなたのお兄さんが来てよ」
と囁いた。
「何んな奴?」
と二郎君は乱暴だ。
「私、見つかっちゃったの」
「駄目だね。何処へ仕舞ったの?」
「未だ見ているのよ。もう一遍行って来るわ」
と姉弟諜し合せている。芳子さんは間もなく戻って来て、大形に胸を叩きながら、
「お机の引出よ。あゝ、怖かった」