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こをつれて
子をつれて
葛西 善蔵
「早稲田文学」1918(大正7)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,970 字 · 34 页
「さあ……」と横井は小首を傾げて急に真面目な調子になり「併し、そりゃ君、つまらんじゃないか。そんな処に長居するもんじゃないよ。気持を悪くするばかしで、結局君の不利益じゃないか。そりゃ先方の云う通り、今日中に引払ったらいゝだろうね」
「出来れば無論今日中に越すつもりだがね、何しろこれから家を捜さにゃならんのだからね」
「併しそんな処に長居するもんじゃないね。結局君の不利益だよ」
彼の期待は外れて、横井は警官の説諭めいた調子で斯う繰り返した。
「そうかなあ……」
「そりゃそうとも。……では大抵署に居るからね、遊びに来給え」
「そうか。ではいずれ引越したらお知らせする」
斯う云って、彼は張合い抜けのした気持で警官と別れて、それから細民窟附近を二三時間も歩き廻った。そしてよう/\恰好な家を見つけて、僅かばかしの手附金を置いて、晩に引越して来るということにして帰って来た。がやっぱし細君からの為替が来てなかった。昨日の朝出した電報の返事すら来てなかった。
三
その翌日の午後、彼は思案に余って、横井を署へ訪ねて行った。明け放した受附の室とは別室になった奥から、横井は大きな体躯をのそり/\運んで来て「やあ君か、まああがれ」