轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

こをうばう

子を奪う

豊島 与志雄

「中央公論」1921(大正10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,292 字 · 80 页

青空文庫

曇りながら冷たく澄みきってるのみだった。

彼は我に返って、心のやり場に困った。一瞬間前の自分が恥しくなった。そして、幾代と兼子とがいつまでも出て来ないのが、俄に気になりだした。罠を張られたのではないかという気がした。

彼は黙って立ち上った。障子をしめた。何とか云いたかったが、言葉が見つからなかった。敏子は子供を抱きながら軽く身を揺っていた。

「みんな何処へ行ったのかしら?」と彼は平気を装って云った。

座敷を出て茶の間を通り、玄関の方を覗いてみると、其処に幾代と兼子とが立っていた。

「どうしたんです?」と彼は怒鳴るように云った。

「一寸困ったことが出来ましてね。」と幾代は云った。彼女の云う所に依ると、昨日永井が瀬戸の家へ来て、約束の千五百円を求めた。瀬戸は一先ず五百円だけを与えて逐い帰した。然しこの金は直接敏子へ渡すべきだというので、今日残額の現金を持ってきて、幾代の手に托していったそうである。「それでも、」と彼女は云い続けた、「私から今すぐお敏へ渡すのも、あまり当てつけがましくってね。兼子さんとも相談していた所ですが、あなたはどう思います?」

「そんなことは出来るもんですか!」