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こどくしゃのあい

孤独者の愛

豊島 与志雄

「世界春秋」1950(昭和25)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,723 字 · 18 页

青空文庫

いずれは、結婚しようかとも思っていた。家庭生活についての怖れも、澄江相手ならば少しもなかった。私は彼女によって初めて、羞恥心などを超越した愛慾を知ったのである。私も彼女も情慾については、他人と比較するわけにはいかない、弱い方らしいけれど、弱いなりに何のためらいもなく自然に、二つの肉体は合致して、倦きるということがなかった。これが愛情というものなのであろうか。

「心配しなくてもいいよ。……結婚しようか。結婚してしまえば、何もかもよくなる。そのこと、僕も考えていたよ。」

「結婚……だめよ。わたし、このままでいいわ。このままでいいけれど……。」

彼女は加津美のお上さんには不義理をするし、叔母さんの方へも工合のわるいことが出来るし、私だって会社に借金をこさえるし、うまくいかないことが分ってると、彼女はぽつりぽつり言うのである。

「だから、結婚しようよ。どうして結婚はだめなの。」

「だって、結婚して、こんど、離婚するのは、いやですもの。」

「結婚して必ず離婚するとは、きまってやしないよ。」

「でも、離婚するようなことになったら、あんまり惨めだもの。いや、わたしあなたと別れるの、いやよ。