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こどくしゃのあい

孤独者の愛

豊島 与志雄

「世界春秋」1950(昭和25)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,723 字 · 18 页

青空文庫

澄江との愛情に包まれて、私はいい気になっていたが、澄江を失ってしまうと、私は以前にも増して一人ぽっちだった。なあに、一人ぽっちだって構うことはない。三十三歳まで生きてきたのだ。年若な女の感傷では、三十三の死を空想することもあるが、私としては……そこが実はぼんやりしていた。

私は昨夜、夜通し、妄想に耽った。夢現の界目での妄想だった。そして白々と夜が明けそめる頃、はっと眼が覚める思いに突き当った。澄江のことだ。彼女はどうしてあんなに取り乱したのか。私も彼女も可なり酔っていたようだが、記憶に残ってることを一々跡づけてみると、私は重大なことを見落していたような気がする。男嫌いなどということについて、初めいろいろ甘っぽいことを考えていた私は、浅薄極まる馬鹿だった。澄江は実はぎりぎりのところで生きていたのではなかったろうか。そして昨夜のめちゃくちゃは、最後の抵抗の試みではなかったろうか。肉体を投げ出し心を投げ出した後の、最後の抵抗。そんなものが女にあるかどうか私には分らないが、それより外に解釈の仕様はない。あれは、愛想づかしなんかではなかったんだ。分らなかったものだから、私は腹を立てたものらしい。