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こどくしゃのあい

孤独者の愛

豊島 与志雄

「世界春秋」1950(昭和25)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,723 字 · 18 页

青空文庫

言い換えれば、私の男心をそそのかすのである。男嫌いということを、決定的な、本質的なものだとは、誰も思わないであろう。すべての男が嫌いだ、といっても、この私だけは、そのすべての男の中には含まれていず、もしかすると彼女が心を寄せかけてくる唯一人であるかも知れないとの、自惚れた希望がある。すべての男というのが完全にすべてであればあるほど、そのすべてから除外される私一人が、輝かしいものとなる。だから、男嫌いな女と聞いて、内心にやりとするほど下卑たのは論外として、たいていの者は、心のどこかに頬笑みかけられるような思いをする。あなただってそうでしょう。なにも隠すことはない。実は、私もそうだった。

さりとて、私は女にかけて図々しい男では決してない。仲間たちからは、むしろ、女嫌いだとされていた。ところが、私のこの女嫌いは、孤独な心根からきたものなのだ。

現代に於て、孤独などということを言い出せば、人は笑うであろう。誰だってみな孤独なことに変りはない。而も群集の中に於ての孤独だから一層仕末がわるい。電車でも満員、街路でも満員、住宅でも満員、オフィスでも満員、その満員の中で、各自にみな孤独なのだ。