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こどくしゃのあい
孤独者の愛
豊島 与志雄
「世界春秋」1950(昭和25)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,723 字 · 18 页
永田と私は、山西証券会社の謂わば社長秘書で、永田は社長のブレーンの役目をし、私はただ書類をいじってるだけである。証券会社は本来ひどく忙しい所だが、山西では重に現物を主として手堅くやっていたし、金融の方面も特別な関係だけに止めていたので、さほど人の出入りも多くなく、殊に私たちの事務はのんびりしていた。永田は頭の中では忙しかったろうが、私の方はただ機械的に仕事をするだけだった。内気で、無口で、気が利かず、隅っこに引っ込んでばかりいたがる私は、社長や永田から見れば、信用出来る男、とまではいかなくとも、少しも気兼ねのいらない男、或る意味で無視出来る男、と思われていたらしい。だから私は、加津美に来ても、二人の談話には加わらず、一人でぼんやり酒を飲んでおればいいのである。
澄江が男嫌いだということは、私は前から聞いていたし、胸の奥の男心に、ほのかな温かみを呼び起されていた。ひとをそらさぬ女、色っぽく何かと話しかけてくる女は、私にはどうも苦手で、却って逃げだしたくなるのである。
私はひそかに澄江の様子を窺ってみる。眼眸になにか打ち沈んだ病弱らしい影があり、口許に勝気らしい気味合いがある。