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こどくしゃのあい

孤独者の愛

豊島 与志雄

「世界春秋」1950(昭和25)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,723 字 · 18 页

青空文庫

そして二人一緒にいさえすれば、それでもう私たちは満足だった。

私は自分の室に、まだそれほど寒くもないのに、炬燵をおこした。彼女と二人、食卓をはさんで坐っているより、炬燵にでももぐり込んでる方が、やはり気楽だ。そしてウイスキー一瓶に、チーズと塩豆、にぎり鮨、それぐらいなもので充分だ。

横坐りに炬燵に顔を伏せて、私は思う。埋め火のほかほかした温かみ、布団のしなやかな柔かみ、それが如何に人の心を和らげることか。私にとって、澄江は丁度そのようなものだ。

然し、澄江は全く別なことを考えていたらしい。

「わたし、くにへ帰ろうかと思うんだけれど……。」

だしぬけに言う。

彼女の郷里は秋田の田舎で、父や兄が農業をやってるのである。

「おかしいねえ。どうして、そんなことを思いついたの。」

返事をせずに、彼女は考えこんでいる。

「お墓参りだろう。そんなことは、若い者がしなくたって、年寄りにさせておくんだね。」

「いいえ、帰りっきりに帰ってしまおうかと思って……。」

意外、というよりもむしろ、私は呆気にとられた。

「わたしたち、このままでは、いけないんでしょう。」

そのことなら、私も考えていた。