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そんごくうのくも
孫悟空の雲
宮本 百合子
『近代文学』十月号平野謙氏の評論について
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,568 字 · 9 页
――まして代議士のやりあいではなく、文学について語る場合、平野氏が、軌道性なんとは変だ、おかしいと云いながら、評論家としての心の働きを、強引なその変さの活用に駆使して、わたしという生きているものの体の上に、あれだけ縦横な軌道を敷いたことは、わたしをびっくりさせた。民主主義文学の話のときは、口述や速記の中の一つの誤記が、ときと場合でどういう怪物としてつかわれるかを学んだ。
彼の聴衆や読者というものは、『新日本文学』などを決してよむことのない人たちとして、平野氏は、ああいう話しかたをしたのだろうか。わたしが「討論に即しての感想」「平和運動と文学者」「その柵は必要か」などを一貫して、新しい文学のために何を求め、どういう傾きとたたかい、どの方向に統一を求めているかということは、実際によめば、その言葉をひいて平野氏がわたしを非難していることのあたっていない現実を示すことができる。
作家は、むき出しに生きて、その仕事は客観的なものとして人々のなかに送られている。どのような批判もあり得る。しかし、評論家が一人の作家について、何か本質にふれた点で語ろうとするときには、少くとも、話がそこからはじまるようなその作家の書いたものについては、その全体を一つの文学的現実として読みとるのが当然な態度である。