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うちゅうせんぺい

宇宙尖兵

海野 十三

「新青年」1943(昭和18)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,974 字 · 72 页

青空文庫

重力平衡圏

われらの居住区は、完全な防音装置が施されており、また換気装置は理想的なもので、充分軟くされた人工空気が送り込まれ、空気イオンも至極程よき状態に保たれてあったために、天空を遥かに高く飛んでいながらも、僕たちの生活は一向地上の生活とかわらない楽なものであった。

だが、このごろになって、すこし妙なことが起り始めた。まず第一に身体が軽くなったことである。歩くにしても、肩に翼がついていてふわふわと飛べそうな感じが加わった。第二に、腰を下すのに、従来にないほどの力が要るようになったのは、ますます妙な感じであった。別の言葉でいえば、雲の上に起伏しているとでもいうか、身体に風船をつけているとでもいうか、とにかく妙なことになった。

それから第三に、卓子の上に置いてある灰皿だの百科辞典などが、ひとりでにするすると卓子の上を走り出すことだった。

その揚句、下に落ちることもあったが、見ていると、金属で拵えてある灰皿が、まるで手巾か紙かが落ちでもするようにゆっくりと落ちていくのに気がついた。が、そのときは、頭が変になったのではないかと思ったので、別にさわぎはしなかった。