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うちゅうせんぺい

宇宙尖兵

海野 十三

「新青年」1943(昭和18)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,974 字 · 72 页

青空文庫

僕にはよく嚥みこめないが、本艇は地球を遠く離れたため、今まで下へ引張りつけていた重力が弱くなったということらしい。

「変な気持だねえ。身体を持ち扱いかねる」

「そうだろう。これからは気をつけていないと、滑ってのめるよ」

「そうかね」

「あと十日も経てば、重力平衡圏へ入る筈だ。地球出発以来、最初の難関にぶつかるわけだ」

魚戸は、得意になって語る。

「重力平衡圏て、どんなところだ」

「本艇は今地球からも引張られ、月からも引張られている。そしてその方向は反対だ。地球の引力はだんだん弱くなりつつあるし、月の引力はだんだん加わりつつある。やがて双方の引力の絶対値が等しくなるところへ本艇がはいり込むのだ。そのときは、本を上へ放り上げても、下へおちてこないで、空間の或るところにじっと停ってしまう。おれたちもやろうと思えば、ベッドもない空間に横になって寝ることが出来る。参考のために、君もやってみるかね」

奇妙なことを魚戸の奴はいいだした。

「化物屋敷だねえ、そうなると……」僕は、ぞっとしていった。自然現象の驚異に対しては、従来あまり大胆になれない僕だった。

「下手をやると、本艇はうごきがとれなくなる虞れがある。