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うちゅうせんぺい

宇宙尖兵

海野 十三

「新青年」1943(昭和18)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,974 字 · 72 页

青空文庫

分るかね」

「よく分らない」

「じゃあこう思えばいいのだ。舟が渦巻のなかに吸込まれそうになっている。そのとき舟から大きな丸太を渦巻の中心へ向って投げ込むのだ。すると渦巻はその丸太を嚥みに懸るが、嚥んでいる間は渦巻の形が変る。ね、そうだろう。その機を外さず、舟は力漕して渦巻から遁れるのだ。それと同じように、いま本艇から出来るだけ沢山の物品を投げ出して、平衡点から遁れようとしているのだ。これで分ったろう」

「まあ、そのくらいでいい」僕には、はっきりしたことが嚥みこめなかった。「それで、それはうまく成功する見込みかね」

「今やっている最中だ。はっきり分るのは、もうすこし経ってだ。おお、卓子や長椅子を放り出している。艇長は、最後には、艇内にいる三十八人の発狂者を投げ出す決心をしている」

「三十八人の発狂者を……」

いつの間にそんなにたくさんの発狂者が出たのであろうか。僕は、ベラン氏のことを思い出した。

「それは人道に反する。発狂者とて、まだ生きているのではないか。生きているものをむざむざと……」

「待て。リーマン博士の考えはこうなんだ。もしも平衡点離脱に成功しなかったら、本艇の乗員三百九十名の生命は終焉だ。