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あんごじんせいあんない

安吾人生案内

坂口 安吾

06 その六 暗い哉 東洋よ

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,066 字 · 26 页

青空文庫

婚約がきまって本人も満足していた時であったが、胸を病んでいた。しかし一応全快後で、病後には私のところから東京の女学校へ通っていた。明るくて、表面は甚だしくノンキな娘であった。あんまり宝塚へ通いすぎるというので私の母に叱られたことがあったが、この娘はいささかもヘキエキせず、巧みな方法で母を再々宝塚見物にひっぱりだして、いつか年寄りをヅカファンにしてしまった。ヅカ見物が公認を得たのは云うまでもない。生きていると、いくつかな。菊乃さんよりは若い。姪の故郷は長岡藩の隣りの藩に所属している。そしてサムライではないようだ。

誰が自殺するか、見当がつかないものだ。私が矢口の渡しにいたころ、近所の老夫婦が静かに自殺していた。小金があって、仲がよくて、物静かで、平穏というものの見本のような生活をしていた人である。子供がなかった。世間的に死なねばならぬような理由は一ツもなかったらしいが、すべてを整理し、香をたいて、枕をならべて静かに死んでいたそうだ。

塩谷先生は菊乃さんが自殺したと説をなす者を故人を誣いるものだとお考えのようであるが(同氏手記「宿命」――晩香の死について――週刊朝日八月十二日号)誰が自殺しても別にフシギはないし、自殺ということが、その人の、またはその良人の不名誉になることだとも思われない。