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あんごしたん

安吾史譚

坂口 安吾

02 道鏡童子

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,437 字 · 27 页

青空文庫

物部氏は正史には大連とあり、大臣は蘇我氏に限るが、この蘇我氏の中には、物部氏滅亡後その遺産をそっくりもらって物部大臣と称した蘇我氏の一人が実在しているのである。つまり蘇我と物部という最高の二氏族のアイノコの物部大臣である。

物部大連の遺産はそっくり物部大臣の物となった筈だから、物部の子孫が大臣の子孫でもフシギはない。この物部大臣の娘の一人が、天智天皇の御子施基皇子に嫁して、道鏡が生れたのだろうというのは喜田博士の説であるが、私もそのへんが手ごろの説だろうと思う。父系から云うと天智の孫だが、母系で云うと大臣の子孫で、どっちの史料も正しいという都合のよい結果になる。千何年昔の謎のことだ。どうせトコトンの真実など分りやしない。道鏡は岡寺の義淵について修業したが、義淵は天智天皇の信仰厚い高僧で、岡寺は義淵のため天智帝が造営されたものであった。

藤原一族の予想した通り、道鏡という人格の現れは女帝の眼界を一挙にぬりかえ、女帝の生き方を変えてしまった。かかる高い人格と深い学識が神ならぬ「人間ども」にも具っているということは、生きている唯一の神として育てられた女帝には考えられなかったことで、身辺の「人間ども」