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あんごしたん
安吾史譚
01 天草四郎
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,351 字 · 23 页
四郎は小さいとき長崎の支那の小間物を商う店に丁稚奉公して神童と謳われたという説もあるし、父とともに支那の小間物をかついで江戸大阪へ行商していたという説もある。そのころ、三代将軍家光の死を流布する者があり、しかし幕府瓦解の怖れがあって喪の発表をさしひかえ死をヒタ隠しにしている、というような風聞があった。それを信じて陰謀を企らんだという見ていたような説もあるが、当てにならない。
しかし、ともかく黒幕の浪人策師連が一揆へみちびくために、幕府の土台がグラつきだしているというようなことを人々に信ぜしめたのは事実であろうし、いま自分らが立てば、幕府を怖れて表向き棄教のフリを見せていた九州各地の旧切支丹大名が立ちあがり、海の彼方からは神父と神父の国の軍勢を満載した大きな船が何十隻も助けにくるなどと放送していたようである。
しかし旧切支丹大名の応じて立つ者一人もなく、原城へこもって幕府の大軍にとりかこまれて後は、外国から神父とその軍勢の船が救援に来てくれるのを当てにしていた。すくなくとも、事情を知らぬ大多数の農民や婦女子は、軍師の放送を信じてそれを望みにしていたのだろう。