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あんごしたん

安吾史譚

坂口 安吾

01 天草四郎

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,351 字 · 23 页

青空文庫

天人四郎が仕立てられて遊説に村々を歩いてから乱に至るまでの期間における策略的なものは、まったく切支丹の悲劇を利用したものとしか見られない。そしてその策謀にのらない正しい切支丹の目は小左衛門とレシイナにあった。私はそう考える。

天草にも明治に至って隠れ切支丹の村が現れているではないか。牛深だの大江などがその例だ。明治までひそかに信仰をつづけてきたそれらの潜伏切支丹は、言うまでもなく原城で全滅した組とは違うもの、その騒動に無関係なものであったろう。四郎らの手がそこまで届かなかったのか、応じなかったのかは不明であるが、どちらにしても全島の切支丹が立ち上っておらぬことは確かで、その事実から考えていいと思われるのは、切支丹にも四郎を批判する目の実在したということであろう。

四郎が伊豆守へ送った返書の矢文に、税がひどくて涙のかわくヒマもないというような文章があるが、それが四郎の直筆だか、四郎自身の考えだか分らなくとも、とにかく、税云々は島原農民の代弁で、四郎が天人として遊説していたときにはまだ島原農民との交渉はなく、一途に信徒の獲得の遊説であった。徳川幕府は亡びて天主の時いたる、というような遊説の内容であったろう。