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あんごしたん
安吾史譚
01 天草四郎
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,351 字 · 23 页
そのような正しくて静かな目がともかくいつの世にもいてくれなくては困るであろう。
しかし、十六歳の少年四郎が存在しなければ、あの大乱は起らなかったであろうか。そういうことを考えると、歴史は一切分らない謎になるばかりである。
だが、こういうことは言える。戦争の商売人の戦法が、全然戦法などに縁のない農民の実生活の必要から修得した手法によって問題なく打ち破られると同じように、愚蒙な時代に於ては利巧とはバカの異名にすぎないこともありうるであろう。
今でも農村などで頭がよいということはカンがよいというような意味に用いられている場合が多い。四郎は幼少にして書をよくしたという。読み書きだけが物を言う昔には、書をよくするというので、神童ともなり得たであろうし、記憶力がよいというだけでも頭脳優秀をうたわれたであろう。伊豆守の才覚が笑い物となり、猪突板倉が名将とうたわれる蒙昧な時代に、神童四郎の神童たる内容が何を指していたか、これは大いに疑ってよかろう。
末世の坊主によく似たような美少年が案外にも神童とうたわれる時代があってもフシギではないのだ。現に当時がそれよりも判断の規準が狂っていたフシギに蒙昧な時代であった。