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あんごこうだん

安吾巷談

坂口 安吾

01 麻薬・自殺・宗教

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,211 字 · 22 页

青空文庫

伊豆の伊東にヒロポン屋というものが存在している。旅館の番頭にさそわれてヤキトリ屋へ一パイのみに行って、元ダンサーという女中を相手にのんでいると、まッ黒いフロシキ包み(一尺四方ぐらい)を背負ってはいってきた二十五六の青年がある。女中がついと立って何か話していたが、二人でトントン二階へあがっていった。

三分ぐらいで降りて戻ってきたが、男が立ち去ると、

「あの人、ヒロポン売る人よ。一箱百円よ。原価六十何円かだから、そんなに高くないでしょ」

という。東京では、百二十円から、百四十円だそうである。

ヒロポン屋は遊楽街を御用聞きにまわっているのである。最も濫用しているのはダンサーだそうで、皮下では利きがわるいから、静脈へ打つのだそうだ。

「いま、うってきたのよ」

と云って、女中は左腕をだして静脈をみせた。五六本、アトがある。中毒というほどではない。ダンサー時代はよく打ったが、今は打たなくともいられる、睡気ざましじゃなくて、打ったトタンに気持がよいから打つのだと言っていた。

この女中は、自分で静脈へうつのだそうだ。

「たいがい、そうよ。ヒロポンの静脈注射ぐらい、一人でやるのが普通よ。