轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あんごこうだん
安吾巷談
03 野坂中尉と中西伍長
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,310 字 · 23 页
彼はすでに、それを忘れたのであろうか。
私は祖国を愛していた。だから、祖国の敗戦を見るのは切なかったが、しかし、祖国が敗れずに軍部の勢威がつづき、国民儀礼や八紘一宇に縛られては、これ又、やりきれるものではない。私はこの戦争の最後の戦場で、たぶん死ぬだろうと覚悟をきめていたから、諦めのよい弥次馬であり、徹底的な戦争見物人にすぎなかったが、正直なところ、日本が負けて軍人と、国民儀礼と、八紘一宇が消えてなくなる方が、拙者の死んだあとの日本は、かえって良くなると信じていました。もっと正直に云えば、日本の軍人に勝たれては助からないと思っていました。国民儀礼と八紘一宇が世界を征服するなんて、そんな茶番が実現されては、人間そのものが助からない。私の中の人間が、八紘一宇や国民儀礼の蒙昧、狂信、無礼に対して、憤るのは自然であったろう。
私の希望がフシギに実現して、軍人と八紘一宇と国民儀礼が日本から消え失せてしまったが、人間が復活、イヤ、誕生してくれるかと思うと、どっこい、そうは問屋が卸さない。
国民儀礼の代りに赤旗をふってインターナショナルを合唱し、八紘一宇の代りにマルクス・レーニン主義を唱えて、論理の代りに、自己批判という言葉や、然り、賛成、反動、という叫び方だけを覚えてきた学者犬が敵前上陸してきた。