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あんごこうだん

安吾巷談

坂口 安吾

05 湯の町エレジー

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,128 字 · 23 页

青空文庫

ハンストなどというものは、甚しく毅然たる精神を必要とするものに相違ない。集団ハンストとか、銀座街頭のハンストなどは、下の下である。

孤独なるハンストに至っては、奥深くして光芒を放ち、神秘にして毅然、とうてい凡夫の手のとどく境地ではない。一つの高く孤独なる魂の運動を直線とする。俗物どもの低俗な社会契約が、この直線を切るのである。その切点は一瞬に火をふく。高い孤独な魂の苦悶が一瞬に鋭い慟哭と化したからである。それは流星が空気にふれて火をふきその形を失うのに似ている。――こう考えて、私はことごとく敬服した。

折から文藝春秋新社の鈴木貢が遊びにきたので、私は温泉荒しの敬服すべき武者ブリについて、説明した。

「バルザックの武者ブリは、当代の文士の生活にはその片鱗も見られないね。たまたま温泉荒しの先生の余裕綽々たる仕事ぶりに、豪華な制作意欲がうかがわれるだけだ。芸道地に墜ちたり矣」

鈴木貢は社へ戻って、温泉荒しの武者ブリを一同に吹聴した。

膝をたたいたのが、池島信平である。

「巷談の五は、それでいこうよ。グッと趣きを変えてね」

ただちに私のところへ使者がきた。