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あんごこうだん
安吾巷談
05 湯の町エレジー
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,128 字 · 23 页
温泉心中もこれぐらい意想外のものになると別格に扱われるが、新聞の静岡版というものは、普通、官報の辞令告示のように、毎日二ツ三ツの温泉自殺を最下段に小さく並べている。静岡版の最下段は温泉自殺告示欄というようなものだ。その大多数は熱海で行われる。
そこで、今年になって、熱海の市会では、自殺者の後始末用として、百万円の予算をくんだそうだ。
所持金使い果してから死ぬのが自殺者の心理らしい。稀には、洋服を売って宿賃にかえてくれ、などゝ行届いた配慮を遺書にのこして死ぬ者もあるが、屍体ひきあげ料、棺桶料金まで配慮してくれる自殺者はいないので、伊豆の温泉のお歴々が嘆くのである。コモ一枚だってタダではない。実に、物価は高いです。それが毎日のことではないですか。ああ。熱海市会は百万円のタメ息をもらす。
大島の三原山自殺が盛大のころは、こうではなかった。光栄ある先鞭をつけた何人だかの女学生は、三原山自殺の始祖として、ほとんど神様に祭りあげられていた。後につゞく自殺者の群によってではなく、地元の島民によってである。何合目かの茶店の前には、始祖御休憩の地というような大きな記念碑が立っていたのである。