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あんごこうだん

安吾巷談

坂口 安吾

06 東京ジャングル探検

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,016 字 · 48 页

青空文庫

それをうまくズラかった連中らしい。声をそろえて、ひやかす。行く先々、まだ近づかぬうちから、みんな巡査の一行と知っている。

私はふと気がついた。私たちは四人づれだったが、いつのまにか、五人づれになっているのだ。スルスルと囲みがとけたとき、そのときから、実は人間が一人ふえていたのである。クラヤミだから定かではないが、二十二三の若者らしい。私たちが立ち止ると、彼も一しょに立ちどまる。

クラヤミのベンチに五六人のパンパンが腰かけたり、立ったり、あつまっている。その前に和服の着流しの男が立っていて、

「ぼくはねえ、人生の落伍者でねえ」

パンパンと仲よくお喋りしている。三十ちかい年配らしい。学者くずれというような様子、本郷辺から毎晩ここへ散歩にきて、パンパンと話しこむのが道楽という様子である。

趣味家がいるのだ。イノチをかけても趣味を行うという勇者も相当いるのである。世の中は広大なものだ。かかる趣味家の存在によって、上野ジャングルの動物は生活して行くことができる。

このジャングルの住人たちは、趣味家を大事にする。お金をゆすったり、危害を加えたりしない。彼らが来てくれないと、自分の生活が成り立たなくなるからだ。