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あんじゅうこん

安重根

谷 譲次

――十四の場面――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,548 字 · 100 页

青空文庫

卓連俊はバケツを提げてドアの階段口から降りる。

李春華 (李剛へ)あなた、何をさっきからうろうろ歩き廻っているんです。また探し物ですか。

李剛 うむ。君は知らないかな。今朝衛生局から廻って来た通知書なんだが、あれに、この辺の種痘は何日から始めるとあったか覚えていないか。

李春華 さあ。私はよく見もしませんでしたけれど、あれなら、今し方鄭さんが読んでいたようですよ。ねえ鄭さん、ほら、市庁から来た青い紙。どこへやって?

鄭吉炳 どこだったか、そこらへ置きましたよ。ありませんか。

李剛 見つからなくて弱ってるんだ。明日の新聞にちょいと書いといてやろうと思うんだが――。

クラシノフ ねえ。李さん。ハルビンのノウワヤ・ジイズニ新聞がこんなことを言ってる。(読み上げる)「今回当地における伊藤公とわが北京公使ならびに大蔵大臣ココフツォフとの会見につき、本社は確かなる筋より左のごとき説話を聴けり。今回の会見は、満洲における日露両国の地位に関し、過般来日清露間に継続したる談判の結果にして、決して偶然の出来事にあらず。ポウツマス条約は単に紙上に締結せられたるのみ。これが実行の場合、全局の政策と衝突するの点尠しとせず。