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あんじゅうこん
安重根
谷 譲次
――十四の場面――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,548 字 · 100 页
東半島大韓帝国に心したまえ
一同はじっと聴き入っている。
7
時間的に遡って、この場の前半は前場と同時刻を繰り返す。
黄成鎬方台所。前の場の左側につづく部屋。舞台正面、下手寄りに廊下へ開くドア。右側に前場の集会所に通ずる扉あり。固く締まっている。反対側に裏口。窓はない。
片隅に土の竈、流し場、水桶ありて、鍋、釜、野菜の籠など土間に置いてある。壁にはフライ・パンなどかかり、棚に茶碗、皿小鉢類。他の隅に薪を積み、中央に低い粗雑な卓子と椅子二脚。暗い電燈。
黄瑞露――黄成鎬妻、五十歳ぐらい。ほかに安重根、柳麗玉、禹徳淳、朴鳳錫、白基竜、黄成鎬、同志一、二および前場の青年多勢と露国憲兵数名。近所の人々。
前場の初めと同じ時刻。壁を通して隣室の青年らの話し声が間断なく聞えている。李剛と別れたままの朝鮮服の安重根が、隣室を気にしながら神経質に、足早に歩き廻っている。テエブルの上に古行李が置いてある。安重根は細目に正面下手の扉をあけて廊下の様子を窺ったのち、卓子へ帰り、焦慮に駆られる態にて行李を開けようとし、逡巡する。椅子の一つに柳麗玉が腰かけて、尊敬と愛着の眼で見守っている。