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あんじゅうこん

安重根

谷 譲次

――十四の場面――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,548 字 · 100 页

青空文庫

反対隣りの乾物屋に灯が点く。手風琴と唄声は消えようとして続いている。間。

老婆 そんなものでしょうねえ、ほんとに。(下手を見て)おや、誰か来ましたよ。うちの人たちかもしれない。どれ、ランプに灯を入れておこう。

と古着屋に入る。

劉任瞻 東は東、西は西。若い者は若い者、年寄りは年寄りだ。

劉任瞻は穀物の笊を片附け、椅子を引きずって家へはいる。すぐその店と古着屋から灯りがさす。街路に光りが倒れて、もうすっかり夜の景色。下手から話し声がして、劉東夏を仲に安重根と禹徳淳が出て来る。

劉東夏 (自宅を指して)ここです。ちょっと待っていて下さい。

家へはいろうとする。

禹徳淳 (追い止めて)君、大丈夫か。一人でお父さんをうんと言わせられる自信があるのか。

安重根 独立党の仕事で、僕らと一緒に行くなどと言ってはいけないぜ。

劉東夏 (英雄に対するごとく、安重根へ)そんなこと言やしません。私はしじゅう父の命令でハルビンへ薬を買いに行くんです。今度もその用で、二三日中に行くことになっているんですから、急に思い立って今夜これから発つと言っても、父は何とも言いはしません。

禹徳淳 (安重根へ)だが、今日この劉東夏君に会ってよかったな。