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あんじゅうこん

安重根

谷 譲次

――十四の場面――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,548 字 · 100 页

青空文庫

禹徳淳 (激しく)安君! 君は同志を信じないのか。

劉東夏 (戸口の椅子から)あれは貨物です。

安重根 汽車はあれきり通らないようだねえ。(禹徳淳へ笑って)三夾河まで行った方がよかったかな。

禹徳淳 しかし、蔡家溝は小さな駅だが、列車の行き違うところで、停車時間が長いというから降りたんじゃないか。

安重根 (劉東夏へ)列車往復の回数はわかっていますね。

禹徳淳 (吐き出すように)もちろんここは大事を決行するに便利なところじゃないよ。見慣れぬ人間がうろついていると、眼についてしょうがない。三人なんか張り込んでいる必要はないんだ。

先刻の支那人ボウイを従えて駅長オグネフがはいって来る。

駅長 (にこにこして)ちょっと調べさせて頂きます。

禹徳淳 (俯向けに寝台に寝転がる)またか――うんざりするなあ。

駅長 (劉東夏を見て)あなたはなぜそんなところに掛けているんですか。

劉東夏 ベッドが二つしかないもんですから――。

駅長 なるほど。(禹徳淳へ微笑)このホテルは駅に接続しております関係上、私の管轄になっておりますんで、御迷惑でしょうが、お答え願います。

禹徳淳 はいはい、(元気よく起き上って肘を張る)答えますとも! さあ、何でも訊いて下さい。