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たぬきじる

完本 たぬき汁

佐藤 垢石

佐藤垢石『完本 たぬき汁』。同一底本的分册已合并为一书。收入:たぬき汁、『七面鳥』と『忘れ褌』、海豚と河豚、うむどん、縁談、議会見物、採峰徘菌愚、酒渇記、酒徒漂泊、すっぽん、増上寺物語、淡紫裳、探巣遅日、盗難、濁酒を恋う、にらみ鯛 、春宵因縁談、姫柚子の讃、美音会、みやこ鳥。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,158 字 · 273 页

青空文庫

そして、もしかすると京都から盗みにきたのではないでしょうか、とつけ加えた。ところが老父は家内に、わしは何も知らない。京都から盗みにきたかどうかなどということは、もちろん知らない。だが、どの親も子を思う心は同じだろう。わしにしたところが、京都にいる娘も可愛いし、お前の良人である伜も可愛い。親の心は誰も同じだ。ところで、みゑ子のことは大して心配しないでもいい、とわしは思う。夜が明けたら落ちついて捜すがいい。わしは眠い。寝る。

こんな謎のような言葉で、老父は家内をあしらったのである。家内はとりつく島がなかった。そこで家内は、夜道を一人の婢を連れただけで、里方の方へ尋ねて行った。しかし、そこにはみゑ子の姿は見えなかった。がっかりした。里方から、妹の嫁ぎ先へ電話をかけて様子を尋ねた。すると妹が電話口へ出て、それはご心配ですね。ですが、私のところへはきていません。それにしても、この夜半では何とも致し方がないでしょう。夜があけてから、ゆっくり心当たりを訪ねることにしたら、いかがでしょう。という挨拶であった。家内は眼を赤くして家へ帰り、一夜一睡もしないで、陽が昇るまで待ったが、みゑ子はとうとう帰って来なかった。