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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
佐藤垢石『完本 たぬき汁』。同一底本的分册已合并为一书。收入:たぬき汁、『七面鳥』と『忘れ褌』、海豚と河豚、うむどん、縁談、議会見物、採峰徘菌愚、酒渇記、酒徒漂泊、すっぽん、増上寺物語、淡紫裳、探巣遅日、盗難、濁酒を恋う、にらみ鯛 、春宵因縁談、姫柚子の讃、美音会、みやこ鳥。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,158 字 · 273 页
は竹胴をつけた武士の顔を思い出し、
『も一足早かったから、あの褌が間にあったろうに――』
褌のない武士の壮絶な最期が、まざまざと眼に浮かんだ。
有村は、臍の上を横に四寸ほど、右の方へ一寸ほどあげて腹を切ったが、朝からの奮闘の上に重傷を負ったため、腕に力抜けてそれなりに路上に突き伏した。但馬守の辻番所の中で絶命したのは、それから半刻後であった。
懐中に、二月二十七日の日付けで吉原元海老屋から受取書が一通あった。
一、昼夜二分(千とせ、玉越)一、一分(芸妓二ツ)一、台二分一、二朱(肴一枚)一、二百文(御膳)一、二朱(芸妓)一、一貫六百匁(酒四升)〆金二両一貫四百文。
さらに、別の遺詠が入っていた。
君がため 身をつくしつつ 健男の 名をあけとふる 時をこそまつ
他の十七人は悉く水戸藩であったが、有村一人は薩摩藩の武士として、この義挙に加わっていたのである。年、二十一。人生の蕾であった。(一三・一一・五)