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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
佐藤垢石『完本 たぬき汁』。同一底本的分册已合并为一书。收入:たぬき汁、『七面鳥』と『忘れ褌』、海豚と河豚、うむどん、縁談、議会見物、採峰徘菌愚、酒渇記、酒徒漂泊、すっぽん、増上寺物語、淡紫裳、探巣遅日、盗難、濁酒を恋う、にらみ鯛 、春宵因縁談、姫柚子の讃、美音会、みやこ鳥。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,158 字 · 273 页
これは、加奈陀と豪州から入ってくる小麦粉に政府が高い関税をかけて防ぎとめたために、日本で耕した小麦の相場が、今のように高くなったのだけれど、それと当時に産額も増してきた。それでも相場が下がらないというのは、こんどは日本の小麦粉を外国へ輸出するようになったからで、ここでお前たちが大口あいてうどんや麺包を食べると、やはり日本の食料が減って虻蜂とらずになるから、いままで通り七分搗きばかり食べたらどうだい、といましめてみた。
家計のことから説かないで、小麦の大切なことを話したのは、あるいは顧みて他をいう類であったかも知れない。ところが、男の子の方が私にいうに、
『でも、区役所からきたビラには、うどんと麺包を食えといって、奨励しているじゃありませんか』
と、妹がこれに和して、
『そうねえ。お父さんは随分認識不足だわ』
と、いって相手にしない。
お上の達しには、個々の家計など眼中にないということが、子供たちには分からないのだ。どこへ、尻を持って行きようもないと思う。(一五・一・二一)