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たからくじ・そのご

宝くじ・その後

山之口 貘

始めてから十三年

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,286 字 · 5 页

青空文庫

池袋のコーヒー店で、I氏を待っている間を、顔見知りの常連の人達が来るたびに、宝くじを買ったことがあるかどうかを一々たずねてみた。

貿易商のSさんは、時に買うことはあるが、当ったことがないというのである。ある高校の教師をしているHさんは、自分としては買ったことはないのであるが、母から頼まれて買うことがあるという。またある小学校の教師であるK君は、買ったことなんかありませんよといって、どうせあんなの当りませんよというのである。それで、K君は宝くじ屋さんの前をいつも素通りしているわけになるのであるが、お母さんから頼まれて買う時のHさんの宝くじの買い方をきいてみると「自分のではないから選ばずに買う」とのことである。自分のだったら選ぶのかと愚問をさしはさむと、「自分は買わないのだから選ぶこともない」という。

記者のI氏と連れ立って、寒い風のなかに出ると、西武デパートの前の歩道に、ネッカチーフのふたりの宝くじ屋さんが店をひろげている。台の両側に赤く縁どった張り紙がしてあって、墨書で「今日明日限り」とある。抽せんが明後日に迫っているからなのだ。

手前のおばさんの耳のそばまでI氏が近づいて身分のほどを明らかにすると、おばさんはにっこりうなずいた。