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ほうえいふんか
宝永噴火
岡本 かの子
「文学界」1940(昭和15)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,505 字 · 62 页
なんだ、これしきのことでおしまいか、という強気のものと、まあまあこれで済んでよかったという弱気のものとであった。そして眼からは、それ等の感情とは関係のない、何の理窟もない涙が止め度なく流れ出るのであった。彼はやっと立上り、匍うようにして寺の部屋へ入り、横にぶっ倒れるや否や、昏々と深い眠りに陥った。
序にこの宝永の噴火の被害のひどかったことを記すと、その被害地の恢復に幕府は三十五年間から七十年余もかかったところがある。幕府は全国の扶持取りから百石につき二両ずつ上納させて救助復興の資金にあてた。
原駅は富士の南側だから風下の東側ほどひどい被害地には数えられなかったが、それでも大迷惑には違いなかった。田畑の灰の掻き除けはしなければならず、川や用水の浚えもしなければならなかった。たまに思い出したように郡代から下げ渡される救助米とか麦種子代とかは雀の涙ほどで何の足しにもならなかった。第一に、草地一面に焼灰が混ってしまったのだから牛馬の飼料には一茎もならなくなった。それでも年を越して春になると梢の花だけは咲いた。それに勢づけられ、村の人はぶつぶつ言いながら働きはじめた。