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みのるさんのせいしんぶんせき
実さんの精神分析
夢野 久作
「喜多」1932(昭和7)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,886 字 · 10 页
甚だ矛盾しているようであるが、実はチットモ矛盾していない。吾々から見ると何でもない事を飽くまで突張ったり、考えたりして持ち悩む。しかしそうしていろいろと分析して成る程というドン底がわかると、アトはケロリとして忘れてしまっている。つまり非常に欲が深いからで、一物も余さず分析しつくさねば止まぬ。一物も余さず分析しつくして見せる……という確信を持ってかかっているのだから、恐ろしい。その恐ろしさが、やはり舞台面の妖気となって随所に発散している。化学分析に伴う異臭と同様に精神分析の異臭が、実さんの舞台表現となって発散するのだ。硫酸か塩酸のようにスゴイ……。
だから実さんの恃むところは唯一つ「不退転の勇気」そのものである。鉄壁でも切りまくる。骨が舎利になっても前進する。そうしなければ一刻も生きていられないからだ。……昨日の成功は今日の不満になっている。讃められた演り方は二度とやらない。わかったらそれ以上のどうしていいかわからない処まで突き抜けて来なければ安心出来ない。或る時は口に凝り、或る時は扇に凝る。どうしていいかわからないから結局そんな事になるのだ。馬鹿も承知。