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よい(ひとまく)

宵(一幕)

宮本 百合子

「女性日本人」1921(大正10)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,834 字 · 18 页

青空文庫

良 三 僕はいやだよ。妙に人道主義者振るのはよしてくれ。詰らない。――

第一考えて御覧な、(だんだん熱中する)医者だって、人間だよ。人間なら、偶には職務以外の楽しみだって持ちたく思うのは当然だろうじゃあないか。

世の中に、病人ほど、或は病人の近親ほど利己主義な者はありゃあしない。雨が降ろうが槍が降ろうが、こっちで一声、病気だと云いさえすれば、忽ち馳せ参じて全力を傾倒するものだと、てんから定めてかかっているのだ。柳田の奥さんが癪にさわったのも、つまり自負心を傷けられたからなのさ。若し実際それほど僕の「霊腕」に接したければ、翌日でもまた改めて迎えに寄来したらいいじゃあないか、自分の方でするだけのことを尽して置きもしないで、死なれると逆捩(さかねじ)を喰わせて、大いに良心に咎めさせようとするなんか、随分傲慢きわまった話だ。ただ死んだという報告だけなら、こちらだって人間らしい気持で純粋に同情もしてやれるが、こんな、思い知ったか、と云うような文句を投げつけられて、僕には、その上の御機嫌伺迄出来ないよ、そういうのは、馬鹿正直というんだ。

やす子 それは奥さんのなさりかたも感情的ね。