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さびしきうお
寂しき魚
室生 犀星
「赤い鳥」1920(大正9)年12月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,800 字 · 10 页
白い道路と道路、都会の美しい肌、それらが星と星とを織り込んで眺められてくるのでした。
「あそこには何も彼もある。おれが永い間考えとおしたふしぎな国がある。そこには一切が光でみたされているのだ。この沼のような暗みや水垢や塵芥があそこには一つもない。」
魚はこう考えると、すこしずつ、からだを動かしながらいました。星の位置がかわるごとに、かれもその静かな位置を変えてゆくのでした。ちょうどそれは物差で計ったように、しぜんに、かれは天上のうごきをからだに受けながら、その意志を継いでゆくもののようでした。
「おれがいつも自分でも知ることのできないうちに、向岸の暗みへまで吹かれるように動いてゆく。ふしぎに自分でそのちからを知ることができないのだ。そして向岸の暗みへゆきつくと、間もなく、あおじろい夜明けがやってくるらしいのだ。あそこは水も冷たい。別な新しい水が湧いている。」
魚はこうつぶやいているうちに、ふしぎに北へ北へとかれのからだが流されてゆく。星もみな北へ動いているように、だんだん光を失ってゆくのでありました。
魚は、ときには烈しい日光をせなかにうけながら、沼の岸の方にからだをすりよせ、そしてはぼろぼろと落ちる土くれをまで、なつかしそうに食べつくすのである。