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さびしきうお

寂しき魚

室生 犀星

「赤い鳥」1920(大正9)年12月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,800 字 · 10 页

青空文庫

見えました。その目はとろんとして何を見つめるということなく、弱々しく、たよりなくなって見えるのでした。

「おれは自分でも次第にからだが重くなるような気がする。ともすると、じっとしていられなくなって何者かがおれを引いているような気がする。そのため、おれは妙にひょろひょろするのだ。」

そう考えながらもやはり、

「この岸つづきに何かがある。おれにはわからないが何かが行われている。おれたちの世界にないものがそこにあるのだ。」と考えて、また、よろよろしました。

「おれのからだの上に何物かが乗っているような気がする。そのためおれは重くて自由に泳げないのかもしれない。」

魚はこう考えたときに、ひとりでに、くるりと裏がえしになって、白い腹をあらわしたのでした。その晒されたような白い腹は、あさましい褪せた色をしていました。

「だが……こうしておれはもう起きあがるちからさえなくなったが、しかし何といういい気持がするのだろう。うっとりとした何とも言いようのない気持だ。ひょっとすると、おれはこのまま起きあがれないで、息が絶えてしまうかも知れない。それにしてもおれは何という安々したいい気持になったことであろう。