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ずいひつ よせばやし
寄席囃子 正岡容寄席随筆集
正岡 容
正岡容『寄席囃子 正岡容寄席随筆集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:随筆 寄席囃子、艶色落語講談鑑賞、随筆 寄席風俗、寄席行灯、わが寄席青春録。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,259 字 · 222 页
その頃反対派の大八会といういたってしがない寄席の方に、たまたまこの日本太郎が出演していた。相変わらずの柔道着で「瓜や茄子」や独劇などを演っていた(同じ頃この派に雌伏期のアチャコがいた)。でもその時例の松葉とかいう馬面の女はもういっしょに出てはいなかった。しかも同じ頃誰かから聞いたところによると、松葉は十二階下あたりの魔性の女で、すっかりはまり込んでしまった日本太郎がこの女ゆえに仲間とも別れ、妻子をも棄て、大阪三界のそれも端席へと落ち込んでしまった、しかも太郎に棄てられたことを苦に病んで死んでしまった女房をさすがに哀れと思ったのだろう、一日、松葉と二人天王寺へ亡妻の骨を納めに行く途、通りがかりの自動車に轢かれて松葉は即死し、さしもの日本太郎は、今はいと味気ない日々夜々おくっているわけなのである、と。
そう聴かされて私はさすがに他人事と思えない哀れを覚えた。覚えずにはいられなかった。神祗釈教恋無常と人の世の味気なさを囀っているものは、すなわち私一人でなかったのだった。でもそののち上方に、小田原に、東京に、その女優さんと別れてからの私の生活は、ことごとくいけなかった。