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ふじ
富士
岡本 かの子
「文芸」1940(昭和15)年11月号~1941(昭和16)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,579 字 · 82 页
ということの惧ろしさとうれしさを始めて感じ出した。これほどに壊れても裂けても、また立上って来る自分。蘇っては必死に美しさに盛返そうとするちから。これは一体何だろう。他と競いごころを起すこの自分は一体何だろう。自分を自分から離して、冷やかに眺めて捌き、深く自省に喰い入る痛痒い錐揉みのような火の働き、その火の働きの尖は、物恋うるほど内へ内へと執拗く焼き入れて行き、絶望と希望とが膜一重となっている胸の底に触れたと思ったとき、自分はまた裂けた。蘇って壊れた自分を観ると、そこにはまた第四の肋骨が出来上っていた。
自分はそれに砂礫の肉と皮をつけた。
しばらく、明暗が渦雲のように取り組む世の中に眺められる。自分を剖き分けて、近くへ寄ってみれば、焼石、焼灰の醜い心と身体、それは自分ながら吐き捨ててしまい度いようである。けれども、やっと取り纏めて、離れて眺めみれば、芙蓉のように美しく、「誰」を魅する力があるもののようでもある。それにつれて、希望という虹がうつらうつら夢みられて来る。
美しくも力強い希望。だが果して、その希望を実現し得られる力が自分の中にあるのだろうか。