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てらだせんせいのついおく

寺田先生の追憶

中谷 宇吉郎

――大学卒業前後の思い出――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,152 字 · 26 页

青空文庫

しかしそれらの研究のうちの多くのものは、水素と酸素とが丁度爆発に適するような割合に混合された場合について調べたものであった。先生の研究はその反対と言っていい場合についてであった。水素に少し空気が雑ったり、逆に空気中に水素が少量混入した時に、爆発がどのような形をとって伝播するかを見ようというのであった。

実験は細い硝子管に、適当な割合の混合気体を入れて、上端で火花をとばせて見るのである。例えば水素中に空気がだんだん余計に雑って来ると、或る割合のところで火がつく。しかし混入した空気の量が少いうちは、その燃焼は点火した場所の附近だけに止って、すぐ火が自分で消えてしまう。そしてもう少し空気を多くした時に、初めてその燃焼が管の中に伝播して行くようになり、いわゆる爆発が起るのであった。

実験のやり方は決っているのであるが、硝子管の太さと長さとを色々にかえ、混合気体の割合をまた色々かえて調べて行くので、やることはいくらでもあった。とうとうそれだけに一学期と夏休みが殆んど潰れてしまった。「水素と酸素とを混ぜて火をつければ爆発するに極っている」と思っていたのであるが、実際やって見ると、管の太さや長さによって、爆発の途中で火が消えたり、消えそうになって更に第二段の燃焼が起きたり、意外なことが沢山出て来た。