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てらだとらひこのついそう
寺田寅彦の追想
中谷 宇吉郎
「寺田寅彦の追想」甲文社、1947(昭和22)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,683 字 · 40 页
事の起りは、十一月の或る日、海軍のSSという軟式航空船が、霞浦の上空で爆破墜落して燃えてしまったことから始まる。原因は勿論不明、搭乗員は全部死んでしまった。海軍では早速査問会を開いて、その原因探究に当ることになり、海軍の技術者と大学の偉い先生方とを委員に任命した。先生もそのうちの一人に選ばれた。
こういう委員会というものは、大抵の場合は、よろしくやって「不可抗力」ということにしてお茶を濁すのが礼儀なのである。それを先生は大真面目に引き受けて『球皮事件』に書いたような恐るべき洞察力を働かせて、無電の発信によるスパークに危険性があるという推論を下された。そしてそれを査問会の答申として提出されたのである。「海軍の連中が焼け落ちた航空船の機械やら、ロープやらを一所懸命に調べて、弁の紐があるとか無いとか言って騒いでいるが、そんなことで真の原因がわかるものではない。むしろ水素の点火は最小限度どれくらいまでのスパークで可能かを決めて、それからその限度のスパークが何によって起り得るかを決めなければならない」ということを話しておられた。そしてこの事件の解決は、その方法で為しとげられたのであった。