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てらだとらひこのついそう

寺田寅彦の追想

中谷 宇吉郎

「寺田寅彦の追想」甲文社、1947(昭和22)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,683 字 · 40 页

青空文庫

実際に飛行船を飛ばせて、無電を打ってみて、誰か吊縄の先にぶら下がって、果してスパークが出るか出ぬか見てみましょう。そのためにもし飛行船が爆発しても、それくらいの犠牲は国家のためには止むを得ません。その吊縄にぶら下がるのは、私がぶら下がります。」最後の方は声ばかりでなく、身体もわなわなとふるえていた。一座はしんとなり、一陣の冷たい妖風が会議室を吹き抜けたような気がした。しばらくは誰も発言する人はなかった。そうしたら田丸先生が、いつもの真面目な顔付で「それもよいが、それで火花が出なかったと言って、安全だということは出来ますまい」と言われた。

F中佐の発言は、当事者としてはもっともな発言で、事実そういう実験もしてみたいのである。しかし先生はこうなると意気地がなく、あとになってから「あの時は実際いやな気持になったね、何だか呪われているような気がして、ぞっとしたよ。もっともF中佐の言うことも本当なんだが」と述懐しておられた。

最後に委員長からこの球皮を製造していたF電線会社の社長さんに、何か意見が無いかという質問があった。この社長は傍聴という資格で参列していたのである。