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しょうらいのにほん

将来の日本

徳富 蘇峰

04 将来の日本

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 122,399 字 · 240 页

青空文庫

わが政治上の世界は広大無辺なりといえどもいまだかかる一種の奇怪なる妄想説の実行を容さざるなり。さらにまた一種の論者あり。曰く「今日においては内に一尺の民権を伸ばさんより、外に一寸の国権を拡むるにしかず。武にあらざれば国を立つるあたわず。兵にあらざれば国を保つあたわず。それ今日は優勝劣敗の世界にあらずや」と。それ国家の目的はいかんの点に存するか。国家はなんのために組織せらるるか。リーバー、ウールジー、ミル、スペンサー一人として国家の目的は一己人を保護するにあることを説かざるものはあらず。吾人は決して喋々としてここに政治学の講義をなすを要せず。論者少しくみずから省察すれば可なり。それいかに国権を拡張し、外国を侵掠したりとて一己人民の権利をば蹂躙し去らば国家の目的いずくにある。古来より世の圧制君主にして民権を圧制せんがために国権拡張に従事したるものそれ幾人かある。論者の言のごとくんばかくのごときはもっとも願うべきことならん。はたしてしからば論者はナポレオン第三世のごとき人を帝王と仰ぐこそその本望ならん。すなわち圧制残忍なる欧州の籠絡巧詐の帝王の臣民たるを欲するか。