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しょうらいのにほん

将来の日本

徳富 蘇峰

04 将来の日本

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 122,399 字 · 240 页

青空文庫

今や英京ロンドンより米国ニューヨークに至るまで三千余里の海底をば、ただ二分半にして通信を伝うることを得。もし十分を費やせばその回答さえ聞くを得るという。スペンサー氏曰く、

エディンバラ府の一市民が電信によってロンドン府の一市民に通信を与うるに要する時間は、電信局に電信を依頼し、および電信局よりこれを受け取るの時間を算入するも、なおはなはだ僅少にしてこの二府の間に動物のごとく肉の連続するの場合において、神経によって刺衝を通ずるに要する時間の四分の一よりさらに僅少なり。

それ社会の神経の活溌なるは動物よりもはなはだし。これあに驚くべきのことにあらずや。けだしこれらの新発明はひとり社会の表面に一大刺衝を与えたるのみにとどまらず、また社会を組織する一個人の感情にいちじるしくその変動を与えたり。上林の秋雁に依頼せざるも郵便は至るところ吾人が通信を託するに堪えたり。風に臨んで故山を眺め泣かんと欲するも、四海八荒みなわが故郷なり。おおよそ『古今集』もしくは『唐詩選』の世界はこれらの発明のために横領せられ、実際的の境界いよいよ進んで想像の帝国いよいよ蹙り、事務の勢力日に長じて詩人の勢力日に減ず。