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しょうけい
小景
宮本 百合子
ふるき市街の回想
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,323 字 · 15 页
一層悲しげに見える料理店の桃色の窓枠の間々には、もう新鮮さを失った飾花や、焼きざましのパイの大皿や青いペパミントのくくれた罐などがある。
鋪道には、絶え間なく男や女が歩いていた。が、どの歩調も余り悠長ではなかった。
折鞄を小脇にかかえた日本服の商人、米国風の背広を着た男達。彼等は車道のすぐ傍を、同じように落付かない洋服姿の男等が膝かけなしで俥に乗り、カラカラ、カラと鈴をならして駆けさせるのを見ないふりで、速足に前へ前へと追い抜いて行く。
女は、一目で、此界隈の者が多いのを知れた。種々な種類の彼女等は、装こそ違え、全く同じような歩きつきを持っていた。顔だけはぬけ目なく並んだ店舗の方にむけているが、足は飽きることない好奇心とは全然無関係な機械のように、足頸を実に軟くひらひら、ひらひらと、たゆみなく体を運んで行くのだ。
合間合間に、小さい子供が一輪車に片脚をのせて転って行った。女の子達が、毬を持って、街路樹のかげで喋っている。子守女のぶらぶらする様子や、店頭でこごんでたたきを掃いている小僧の姿などが、一瞥のうちに、暖い私的生活の雰囲気を感じさせた。
私は、大抵のとき、前に云った建築敷地の板囲いの前に自分を現した。